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 百姓出会いの会のご報告

タナダからの手紙 No.2 2006/1/18



沢畑@愛林館です。このところ、お誘いばかりで報告をサボっておりました。

九州百姓出会いの会は、1/15−16に予定通り開催しました。今回は私が主催者ではありますが、福岡方面からの参加が多いので、田浦の御立岬公園を会場にしました。

まず集まって、自己紹介です。今回は全体で35人と小規模でした。過去の参加者の名簿に基づいて案内を送ったのですが、最近の参加者が含まれていなかったためでもあります。毎年主催者が変わるというこの会の弱点でもあります。

続いて、鹿児島大の岩元教授に、最近の農業政策について報告をしてもらいました。乱暴にまとめると、国にお金がなくなって、農水省の各種補助事業もぐんと縮小。ごく少数(40万戸)の4ha以上の大農家のみを対象として、残りはどうなっても知りません、という感じです。果たしてこれで、農村は良くなるのか、という点が皆心配なわけです。あまり良くはならないでしょうね。

夜は太刀魚がいっぱい出てきた料理で縁会。さすがに田浦です。6時から9時まで、乾杯と最後の締めだけで、後はひたすら語る時間でした。いろいろと面白い話ができました。やっぱり余計なことをしたらいかんですね。宴会は場所を移して深夜まで続きました。

翌日は、二手に分かれてディベートもどきの討論会です。WTOの自由貿易体制を押しすすめ、市場原理を強めて行こうという立場とそれに反対する立場です。前者は、最近の農林水産省の政策にも感じられますし、何より小泉首相の考えに近いものだと思います。福岡の宇根豊氏に、仮想的農林水産省代表となってもらって、まずは農業政策の基本的な考え方を述べてもらいました。宇根氏の持論は、もちろん全く違うのですが、ディベートですから立場を離れて話をする方が面白いのです。最初は下のようなことでした。

・日本は戦後GATTの恩恵を被って、貿易立国で豊かになったから、その後進のWTO体制も当然支持する。
・WTOの枠内で、どうにか日本の農業を守ろうと努力をしている。
・ただし、EUでも直接所得補償などを駆使して農家1軒50ha程度の規模で効率的な農業を行っているので、日本では4ha以上の農家は守る。それ以下は潰れてもらって仕方がない。
・環境面はこれまで遅れていたが、2年後から環境維持作業についての所得補償政策を実施するので、目配りもできている。
・自由貿易を推し進めたいという政府の中で、これだけ頑張って農業のことを考えているのだから、農家はもっと農水省を応援してほしい。

補強意見としては
・戦後の暮らしは、外国からの輸入原料・輸入品を大いに活用して豊かになった。これは自由貿易のおかげ以外の何者でもない。

などがありました。

反対意見としては
・貿易を自由化して農業がよくなったモデルはあるか?
・4ha以上の農家しか残らなければ、現在の農村の地域社会は成立しなくなるが、その後をどうするのか?ヨーロッパでも農村人口が減りすぎ、日本で小農を多数維持した政策が成功ととらえられている。
・会社の農業参入を認めたとして、会社倒産後に放置される農地が増えるのではないのか?
・BSEや鶏インフルエンザなど、農産物の移動が多くなると病気の移動も増えるのではないか?
・WTO体制で豊かになった例は本当にあるのか?飢餓は一向に減らないではないか。
・食糧を輸入するということは、人間の体を通った後の屎尿も含め、日本にモノを増やすことだから、環境が悪くなるのではないか?
・専業農家ばかりが農村の担い手ではなく、兼業農家も重要な担い手であるが、そこへの対策はあるのか?

といった点がありました。仮想農水省代表は話をはぐらかしたりすり替えたり開き直ったり、正面から論破するのはちょっと難しかったです。

最後のまとめで、では今後それぞれの村を守るにはどうするかという話で、・統計の数字ではない、日々の農生活に密着した数字、つまり「身近な数字」「生身の数字」でこちらも対抗しよう。
・数字にできない、でも日々の農生活で感じている事柄を、しっかりと表現しよう。
・都市の住民にわかるような言葉でいろいろ伝えよう。

といった対策が出てきたと思います。やはり、日常的な村の暮らしの中で、地域環境や人づきあいを重ねて、その良さをきちんと引き出して人に伝えないといけません。
グリーンツーリズム、村まるごと生活博物館、直売所、インターネットといった手段
で今後も伝え続けるよう、私は努力します。

なお、話の途中で、現在農水省が展開しようとしている「経営所得安定対策等大綱」
の話が何回も出ました。これは、来年度中に計画を立てることになるので、次回の会議はぜひ皆で自分の例を持ち寄って討論しようということになりました。次回は唐津です。また来年、お会いしましょう。

参加者の感想が
http://plaza.rakuten.co.jp/yamawaro/diary/200601160000/
http://blog.urban-green.jp/
にありますので、こちらもご覧下さい。