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石垣積み教室のご報告

タナダからの手紙 No.9 



石垣積み教室のご報告

3/17−23まで、予定通り石垣積み教室を開催しました。開催要項を愛林館のURLに載せ、メールマガジンでお知らせしたところ、全国各地(神奈川県・千葉県・福岡県・大分県・鹿児島県・熊本県)から参加者が集まってくれました。

教室の参加費は1人1千円(何日でも同じ)、食費は夕食・朝食で2500円。愛林館の大部屋に、男女別に雑魚寝の合宿です。夜は地元の豪華食材でシンプルな料理、朝食は大粒の納豆と自家製の味噌汁が中心でしたが、楽しんでいただけたと思います。

では、ちょっと長くてすみませんが、よろしくお付き合い下さい。
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■第1日 3/17(土)

予定通り石垣積み教室を開始しました。前夜は雨だったので初日から中止かと思いましたが、朝から快晴で作業には支障はありませんでした。

まず、ティピー(北米先住民族の円錐形のテント)を張ることからスタート。雨が降ったらこの中で昼食を取ることになります。それから石垣の作業に入ります。今回は、愛林館で面倒を見ている28アールの棚田(12枚)の一番下まで2トン車が入るよう、狭い農道の幅を広げる作業です。当然水田の面積は減りますが、そのデメリットと、車や乗用の機械が入るメリットを比べれば、メリットが大きい訳です。

本日は、農道の一番先端部に車の転回場のための石垣を積みました。生えていた竹を伐採し、根をパワーショベルでこかして(除去して)、今あるコンクリート擁壁と石垣の上にさらに石垣を積みます。一日で、高さ1m ×幅5mくらいの石垣ができました。今日は参加者にユンボ運転の得意なフォークシンガーK氏がいたのではかどりました。

なお、石垣の先生は昭和10年生まれの寒川敦さんと、大正15年生まれの吉井虎雄さんです。お二人とも若くはないのですが、身のこなし方、石の動かし方、てこの使い方、石の切り方(ハンマーで石を叩いて、狙い通りに割るのです)などすごいです。

夜は猪鍋とうまい焼酎で満腹。この日の参加者は水俣の他、横浜市・福岡県大牟田市から来てくれました。

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■第2日 3/18(日)

農道の法面になる低い石垣(高さ30cm〜1m)を長さ10mほど積みました。いつも写真を頼むT氏は花粉症で死にそうな顔をしながら撮影してくれました。管理栄養士のCさんが2人の娘さんとともに霧島市からおいでになり、3時のお茶ではたき火で焼いてくれたホットケーキを食べました。夕食も作ってくれました。猪肉の炒め物、椿油の天ぷらもあり、贅沢でした。

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■第3日 3/19(月)

昨日の続きの低い(とは言っても1mくらい)石垣積み。これも農道の法面になります。雨が降ってきたので3時で終わりましたが、ほぼ終わりました。

夕食は、昨日の差し入れのクレソンとほうれん草の野菜炒め。山のような野菜を食べ、健康になった気分です。

夜は熊本学園大水俣学研究センターの勉強会で、私が村丸ごと生活博物館の事例発表をしました。せっかくなので、石垣の皆さんにも参加してもらいました。その後の宴会にも参加し、違う刺激を受けたことと思います。

RKK熊本放送の取材があり、夕方のテレビニュースで流れました。
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■第4日 3/20(火)

前日夜は雨で、この日は中止かと思われましたが、晴れました。雲一つない快晴。農道作りは終わり、今日からは3枚の棚田を1枚にする工事に着手しました。今ある石垣の上に追加して石を乗せるのですが、一から作るのと違って、下の石がぐらぐらしたりして結構大変です。
バンジョー弾き氏もちょこっと顔を出してくれて、ユンボで巨石を動かすところを見つめていました。

夕食は、鹿肉にジャマイカのハーブペーストをすり込んだステーキ。辛くて旨かったです。肉は石垣講師の吉井氏からいただきました。

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■第5日 3/21(水)

本日は作業をしない日です。冬の間川で過ごした山の神さんがこの日に山へ戻るので、川を扱う工事はしない方がいいという久木野の伝統を尊重しています。作業の代わりに、寒川水源までの棚田を見て回りました。石垣積み作業の前と後では、石垣の見え方が全く違います。これまでは単なる石の集積なのですが、経験があると、どのように積んだかが少し見えてくるので、昔の人と対話をしているような気がします。
壊れたところを修復したところ、道路の拡張に伴って積み直したところなどが分かるようにもなります。この日も経験者と未経験者が一緒に回ったので、その差を感じました。

棚田だけでなくて、水源の森も見に行きました。3年前に積んだ石垣を見に行ったら、そこの川にクレソンが生えていたので、いっぱい摘んできて夕食で白和えになりました。
午後は教室は休み。参加者の3人を相手に、バームクーヘン作り体験をしました。竹の芯に、生地を少しずつかけてたき火で焼くのです。竹の炎で焼くとうまくできます。この日の参加者は生地作りが上手で、たき火も専任の番がいたので、強火を維持できました。
快晴で暖かく、大変気持ちの良い一日でした。夜の食事はこの日も来てくれた管理栄
養士のCさん作のごちそう。メインは黒豚とほうれん草のしゃぶしゃぶです。
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■第6日 3/22(木)
作業を再開。3枚の水田を1枚にする作業の続きで、石垣のかさ上げです。上げる高さは約1m、でも結構な長さがあります。したがって、埋めるためにかなりの量の土も必要。今回はすぐ隣でコンクリート護岸を作る工事が行われていて、埋め土もいっぱい出たので、お互い楽でした。

写真撮影のT氏が積んだ石を数えてみると、朝9時過ぎから10時半のお茶までの間に17個ありました。午前中はパワーショベルを使わなかったのですが、結構な個数になるんだなあと実感しました。

夜は具だくさんの猪汁と昨日取ったクレソンのおひたしです。

ビールと焼酎を腹一杯飲んだのは言うまでもありません。
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■第7日 3/23(金)

本日もかさ上げの続き。最初にレベルを借りて、どれくらいまでかさ上げをするのか、見当をつけてみます。目指す高さまで到達した部分もあります。でも、かさ上げ作業自体は、今年は途中まででした。続きはまた来年度ということになります。

最後にティピーを解体しておしまい。教室はこれで終わりです。

*******< 感 想 >*********************************************************

■初日の参加者K氏からは、下のような感想がありました。(沢畑の掲示板より引用)

1年があっというまに過ぎ待ちに待った石積み、憧れの師匠にもあえて感動です。
時間があっという間にすぎました。

昼から師匠はきていただきすばらしい技術の前に感動の連続です。
細身の体に大きな石がスーット動くところは感動ものです。
たまに発する久木野弁がまた感動ものです。

時間がこのままとまってほしい。
師匠と過ごしたこの充実した時間
宝物がまた久木野にできました。
今日も仕事の途中寄りましたけど
もう一緒にやりたくでうずうずでした。
師匠と一緒に昼食だったら1曲用意してたんですが・・・・。

大牟田のMさんが必死にワイヤーを懸ける・・ずぶ濡れになりながら・・
あげる石に師匠が的確な指示このあうんの呼吸がたまりません。
それがガチット石組みに組み込まれた時なんか・・・・う〜んたまりません。

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■なお、掲示板には常連参加者Sさん(目下子育て中で今年は参加できず)から、このような書き込みもありました。来年は参加できるでしょう。

Kさんの感動の報告、目に浮かぶようです。
細身の体で石を自在にあやつって、しかもその動かした石がピシッとおさまって…
このまま時間が止まってほしいという気持ち、わかる!わかります!!
あー、私も久しぶりに先生の妙技にホレボレしたい!
今、私が自宅でこうしている間にも、水俣では感動のシーンが繰り広げられていると思うと…。
参加できているみなさんが、ううううらやましいです。
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■大分県由布市から参加したIさんの感想は下のようでした。

石垣積み教室、ほんっと楽しかったです・・・
棚田や森の見学から始まり、青空の下でみんなで作業するのも、先生の水俣弁(久木野弁?)を聞くのも勇姿にほれぼれするのも、愛林館も食べ物も呑みもそして出会えた人たちも!
いやいや400キロ遠くないっすよ。
また遊びに行きたいです〜☆ 今後ともよろしくお願いしますね(^^)
(沢畑注:400キロというのは、Iさん宅から水俣までの往復の距離。車で来てくれました。)
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■18歳で、4月から大学生になる鹿児島県霧島市のCさんの感想は下の通りです。

先週1週間、愛林館で石垣積みの研修に行って来ました。
ずっと行きたい!と思っていた愛林館での研修では、本当にいろんな事を吸収できた気がします。
(中略)
研修終了後の、閉会式での感想でも挙げたことなのですが、私が久木野に来て、一番最初に目に入ったのがやはり棚田で、私の中での色は、棚田の「緑」が中心だったんです。
でも、石垣積みをしているうちにその色は、石垣の「灰色」中心になってしまいました!

同じ景色を見ているはずなのに、全然違う景色でなんだか自分でも不思議でした。
(有りがちなコメントですみませんっ。でも、本当にそう思ったんです。)
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■助手のHさん(鹿児島県霧島市)の感想です。1年タイに住んでムエタイの訓練をしていた肉体派でもあります。間もなく英国へ旅立ち、向こうで暮らすことになります。

 昨年の働くアウトドア以来のスタッフとしての参加でしたが、今回も前回に勝るともおとらないほど勉強になり、大変感謝しております。
 
 今回は季節的に「汗まみれ」にならずに済んだのが、実は結構嬉しかったりした僕でした。重量物を持ち運ぶというナチュラルウェイトトレーニング、最近運動不足だった僕にとっては実に好ましい作業でありました。
 それにしてもやはり驚いたのは超人吉井さん!あの年齢であの動き、あり得ないです!今の世の中はそれこそ重機だの何だのと文明の利器が威力を発揮してますが、それがあまりない時代には、まさに人体が道具だったんでしょうね。そうした日常の中での色々な作業を通して、あの超人が完成されたのだとつくづく感じました。
 下手にお金払ってジムに行くより、こうした作業の方がよっぽど健康にいいと僕は確信しています。
(中略)
 僕も今回の活動を通して、明らかに石垣に対する見方が変わりました。バイト先にあった石垣を見て、「あ、これちゃんと効いてない。適当に積んだのかな?」等と勝手に考えたりして、一人「これが石垣積み教室効果か!?」と驚いたりしております。そこから飛躍して「英国でも石垣を!!」までは考えていませんが・・・。(笑)

 もうしばらくしたら霧島を出てしまう僕ですが、愛林館をはじめ、出会った多くの人達とはこれからも繋がっていく事と思っています。英国にお越しの際は是非ご連絡を!って誰も来ないですよね・・・。

 重ね重ね本当にありがとうございました。
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主催者の沢畑としては、今年も無事故でまず良かったです。農道もできたし、今年の農作業はぐんと楽になります。堆肥など、これまでいっぱい入れたくても難しかったのですが、これからは2トンダンプで買いに行き、そのままどさっと田に入れることも(12枚全部ではないけれど)可能になります。

また、参加者の皆さんと毎晩酒宴をしましたが、こちらもすごく楽しい日々でした。
重労働系のイベントには、やわな人は来ませんし、昼間に共有した時間が濃い分、話もはずみます。肝臓が少し疲れたかも知れませんが、うこんでも飲んでしばらくは酒量を減らすことにします。

次回は、来年3月ではなくて本年(07年)11月頃に開催するつもりです。皆さんもぜひご参加下さい。